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夜のゴルフ練習場
e0087225_0474544.jpg 日が沈んだ後の、ねっとりとまとわりつく様な湿度の高い空気の中をスクーターで走り抜ける。暗闇の中に明るく浮かび上がるのはゴルフの打ち放し練習場。ぼんやりと浮かび通り過ぎるその映像に過去の記憶が呼び覚まされる。
 私はゴルフはやらないのだが、私の父は大分凝っていた様で、週末となると大きなバックを担いで練習場に通っていた。いつ頃だったろう、小学生か中学生の頃だろうか、夏の夜に何度か練習について行った事があった。ゴルフに興味があったわけではなく、父が練習をしている間明るく照らし出されたネットの周りを歩き回るのだ。そこらの雑木林からクワガタやカブトムシが飛んできてはいないかと探していたのだが、見つかるのは古ぼけた蛍光灯に巣をかけた蜘蛛ばかり。じっとりと汗ばむ空気の中ぼんやりと蜘蛛が巣を張るのをいつまでも見つめていた覚えがある。
 あれからずいぶん時間がたって、年老いた父はゴルフをやめてしまった。青い光の中を蜘蛛がゆっくり時を刻む様に糸をかける記憶だけが残った。



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by marshM | 2010-08-01 23:59 |
日本の夏
e0087225_0381538.jpg 昼間は35度を超える猛暑、宵には強い雨。蒸した風に焼ける様な日差しとくれば少し前まで沖縄や小笠原、サイパンの島の気候の事を連想した。ところがこれは今の日本の現状である。
 夏に南の島に行こうとは思わない。日本の夏は湿度が高く過ごし辛いが、積み重ねた文化の中に風流という物がある。昼下がりの葦簀をかけた縁側、冷やしたスイカ、時折来る夕立。日本は古来から夏は湿度の高い気候であったから、家は木造で風通しがよい。打ち水をした庭をわたる涼しい風に時折混じる蚊取り線香の香りは日本の夏でしか味わえない物なのだ。
 このまま気候が変動して本州も亜熱帯化してしまったら、南の島に行く手間が省けると喜ぶべきなのか、風情が無くなると嘆くべきなのか。街中のエアコンや車の排気に朦朧とする頭には少し荷が重い問題だ。



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by marshM | 2010-07-25 23:59
夏の旨味
e0087225_083423.jpg ラーメン屋に入って思いのほかそこの味が気に入ると、途中から食べるペースが極端に落ちる。麺がのびてしまうなんて事は頭になく、いやそののび加減が変化していくところさえも楽しんで、その楽しみが出来うる限り長く続く事を祈る様に箸の動きがゆっくりになるのだ。
 四季の中で私は夏が一番好きだ。かといって冬や秋や春が好きではないとは思わない。凛とした冬の朝の空気や、もやに煙る秋の夕日や、うららかに花が咲き始める春の昼の日差しは大好きだ。ただ一点、秋から春にかけては「早く夏が来ればいいのに」と思うのに、夏の間は「冬の涼しさが懐かしい」と思わないという事をのぞいては。
 梅雨が終わるととたんにどこかで心がそわそわする。それはあのラーメンののびていく麺さえも楽しんでしまう部分が、夏の旨味を盛んに手探りしているのではないか、と思うのだ。



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by marshM | 2010-07-20 23:59 |
水鉄砲
e0087225_1112765.jpg 昔、小学生向けのスイミングスクールに通っていた頃に、コーチが楽しげにやっていた手だけを使った水鉄砲が真似できなくて悔しかった。右手の三本の指を左手で握り、水から持ち上げてピュッと勢いよく飛ばすのだ。
 風呂に入るたびに思い出しやってみるのだがなかなか上手く行かない。それが今日やっと上手くできるようになった。何の事はない、右手の三本の指を心持ち曲げ気味にして空洞を作っていたのだ。文章で書くと簡単だが、左手で握る指を真っ直ぐにせず曲げるのは少し無理な力が加わり形作りにくいのだ。それだけにかかる圧力で水が遠くに勢いよく飛ぶのだが。
 まったく、いい大人が風呂の中で何をやっているのか。おかげですっかりのぼせてしまった。



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by marshM | 2010-05-15 23:59 |
通学路
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 実家からの帰り道。昔高校へ通うのに自転車で走った細い尾根道を強引に車で走ってみる事にした。2kmほどの距離を信号なしでショートカットできるので、特に土曜日のショッピング渋滞が懸念される時間帯には効果的だと判断したのだ。
 自転車で走っていた頃は半分舗装していない獣道のような所だったが、今では社宅団地や雑木林が建て売り住宅に変わり道路も整備されている。相変わらず車一台がやっと通れるくらいに細い部分はあるが、抜け道に使う車もいないのでさっさと通り抜けられた。
 三年間雨の日も雪の日も通い詰めた道はさぞ思い出にあふれているだろうと思っていたが、案外何も思い出さなかった。自転車で通った道はサドルにまたがった高い視点でないと違う物に見えるのかもしれない。あの団地の風景と共に自転車の思い出も遠い彼方に封印する時なのだろう。



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by marshM | 2010-05-08 23:59 |
そぼ降る雨に
e0087225_0573330.jpg 最近通っている病院は、最寄りの駅から電車で一駅、家のすぐそばのバス停からは遠回りして20分ほどの距離にある。普段ならスクーターを使って7・8分で着いてしまうのだが、先日の雨の日はバスを使ってみた。
 その帰り、思ったより早く終わったので家まで歩いてみる事にした。2Kmほどもない距離だから、普通に歩いても1時間はかからない。途中に気になる白鯛焼きの店もあるし、雨降りにしてはウキウキした足取りで歩き出した。
 もう6年以上も住んでいるこの街だが、買い物は車、駅に出るのはスクーターかバスを使うのでのんびり歩いて縦断するのはこれが初めて。住み慣れた町なのにすごく新鮮な景色に思えて楽しかった。結局鯛焼きは噂ほど美味しくなく(鯛焼きは焼きたてが一番)、普段運動不足のせいで足が棒のようになってしまったが、なんだかとても有意義な時間を過ごせたような気がした。
 思い返せば雨の日にのんびり歩くのは何年ぶりの事だったろう。



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by marshM | 2010-04-24 23:59 |
平成のサービス
e0087225_073168.jpg 栃木県の奥鬼怒で出会ったのは、次にイタリアに行く時には絶対はずせないと決めていたローマからの旅人だった。私よりも頼りない宿の人の英語を見かねてうちのカミさんが助け船を出した。色々と話しているうちに「ローマに来たら連絡して」とアドレスを交換する事に。これも何かの縁というものだろうか。
 しかし、解せないのが宿の対応。客に通訳を押しつけ、食事も頼りになるからと隣にするのはこちらとしても彼等の役に立ったから良かったのだが、宿側から私たちに対しては取り立ててなんの挨拶もなし。通訳をしたカミさんには勿論簡単なお礼の言葉はあったが、彼女は私たちと一緒に来た宿の客なのだ。食事を中断して料理の事や次の日の朝食の事などを通訳しなければならないのだから、ビールの一本も付けたらどうだと笑い話にしていたくらいなのだが、チェックアウトの後で申し込んだのとは一ランク上の食事に勝手に変更されていた事がわかってがっかり(勿論その差額はしっかり取られた)。
 麓から宿のバスか歩いて登るしかたどり着けない、未だに雪景色が残る良い温泉なのだが、建物だけでなくサービスさえも昭和の名残を引きずっているようでは、もっと町に近い温泉宿に客を奪われる一方だろう。早くそのことに気が付いてくれる事を祈ろう。



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by marshM | 2010-04-13 23:59 |
その月を見たか
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 雲が切れた夕方、藍色の空にぽっかりと丸い月が雲の紗の間からにじみ出すように現れた。窓から顔を出してその景色を見たのは一瞬の事なのだが、その光景がその後何時間も頭から離れない。月のない晩が長く続いた後なので、久しぶりに見るその景色がどこか遠くへ気持ちを持って行ってしまったようだ。
 アランブラ宮殿の上に時を超えて浮かぶ月、ユーラシアのどこか不毛の大地の上を飛ぶ飛行機から見た朧な月。月は地球上のどこから見ても同じ月だが、1日はおろか1時間たりとも同じ表情を見せる事はない。西に沈む地平線の向こうで誰があの月を見上げているのだろうか。



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by marshM | 2010-03-29 23:59 |
ヤツらのたてる音
e0087225_0173547.jpg どこからともなく甲高い轟音が次第に近づいてくると、音の感覚ではまだ真上に達していない頃に小さな戦闘機の影が視界を横切る。厚木あたりの米軍か航空自衛隊か、逆光に黒く沈んだ影はハッキリと判別が付かない。
 横浜近辺は付近に基地が多く、羽田や成田の商業飛行空域が上に被さっているため、軍用機が常に低いところを行き来する。もちろん厚木や沖縄の基地に隣接した地域に比べれば静かなものだが、それでも戦闘機のアフター・バーナーの音や編隊を組んで窓ガラスを揺するヘリコプター集団の爆音はかなりのものだ。
 もう聞き慣れてしまっているからさほどうるさいとも思わないが、それでも環境音として容認するのも癪に障る。テレビやラジオがここぞという時に限ってそんな音が被さるのだから余計にいけない。



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by marshM | 2010-03-03 23:59 |
記念日
e0087225_113358.jpg 数日前に雪が降ったばかりだと言っても、この時期風が無く太陽が出ていれば確実に暖かい。朝、庭に裸足で出てつま先が冷たくないと思うだけでもう頭の中は夏で一杯になる。
 ここ数年余裕がある時は寒い時期に南の島へ出かけていたが、今年はじっと我慢の年だ。タイムマシンを使わずに一日一日夏が来るのを待たねばならない。
 そう言えば新婚旅行に南の島に行ったのは秋風吹く頃だったが、籍を入れたのは2月だった。携帯のメールで「昨日記念日だったね」とやり取りするのんびり夫婦。



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by marshM | 2010-02-23 23:59 |