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昼の顔
e0087225_1542391.jpg 事務所に通うようになって早1年以上が経った。その間お昼ご飯に通う店を色々試してみたが、大体定番が決まってきた。その基準はもちろん安くておいしい店なのだが、中には多少高くても、それほど取り立てておいしいという事は無くても通う店が何軒かある。そこは決まって元気なおばちゃんが切り盛りしている店なのだ。
 ヨーロッパのレストランやカフェ、バールなどはテーブルやカウンターの担当が決まっていて、流行っている店には必ず名物オヤジが切り盛りしている。控えめに笑いさりげなく気配りをするサービスのプロフェッショナルだ。気持ちよく食事ができればそれが香辛料となり、多少風采の上がらない料理でもおいしく思えてしまうものだから面白い。
 ちょうどヨーロッパの名物親父と同じ位置に日本のランチタイムのおばちゃんたちがいるのではないかと思う。初めて入った客でも気さくに常連のように話しかけ、混雑した客たちを笑顔でさばいていく。何も昼の定食屋に限らず、飲み屋やバーにも同じようなサービスは存在するのだが、あわただしい昼ごはんの時間こそこう言った存在が光って見えると思うのだ。
 さて、明日はどこの店で昼ごはんを食べようか。
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by marshM | 2011-12-15 23:59 |
恒星間宙行士の憂鬱
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 近頃のマンションタイプの建物は壁は厚く窓は密閉式で、窓さえ閉めておけば騒音も少なく隙間風が入ってくる心配も無い。その代わり、風が吹こうがゲリラ豪雨が降ろうが気がつかない。窓を開けて、ベランダに出て初めて何かしら痕跡があって気がつくことが多い。
 建物の構造的な事だけが原因でもないだろう。階数が上で地面から遠い、風が抜ける電信柱や樹木が離れた所にある。前の家では風呂に浸かれば通気口や換気窓から竹林を渡る風の音が聞こえてきたが、全く窓の無いユニットバスに浸かっていると微かに機械的なノイズが聞こえてくるばかり。まるで古いSF映画の恒星を巡る船、星を渡る宇宙飛行士の孤独を連想させる。
 休みの日に早起きをしても外の様子が今までより伝わってこないから、一日時を過ごした実感の無いままあっという間に暗くなる。なんだか損をしているようだが、これにも利点はある。真冬でも外界と隔絶されてるから夏を連想しやすいのだ。などと建設的な思考をどこかで鼻で笑っている自分がいた。
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by marshM | 2011-12-14 23:59 |
渋谷
e0087225_2183643.jpg 久しぶりに渋谷をブラブラと歩いてきた。というのも、カミさんの実家のほうにいる姪っ子たちの、クリスマスプレゼントを選ぶのに付き合ってきたのだ。
 渋谷でよく遊んでいたのはもうずいぶん昔の話。109の賑わいは変わらずとも、その周辺環境はすっかり変わってしまった。それよりも一番変わったのは自分の年だろうか。流行の店でハイティーン向けのかわいらしい洋服を見ていると、自分と同い年くらいの女性が通りかかるのだが、その横には必ず娘を連れて歩いている。いつの間にかそんな年になってしまった自分が、相変わらず女性の買い物に付き合って同じ109の中を見て回っていると思うと、なんだか可笑しくなってきた。
 109を出てすっかり様変わりしてしまった道玄坂周辺を一回りして、遅めのランチを楽しんでから家路に着いた。
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by marshM | 2011-12-10 23:59 |
時の満ち引き
e0087225_05511100.jpg 毎日通勤で目に付く風景に近所の川がある。この川、海が近いせいで潮の満ち引きに影響されてその時々でまったく違った風景になる。特に私の目をひきつけてやまないのは、満潮時遊歩道を越えて水面が上がり、安全柵の天辺まで水没してしまう景色だ。
 人間のためにある施設が水の中に沈んでいるというのはある種退廃的な心象を呼び起こす。古代遺跡や温暖化した未来世界の姿が脳裏に浮かぶのだ。そんな脳内トリップを日が沈むまで佇んで続けたい誘惑を振り切って通勤路に戻る。輝ける未来のために立ち止まってはいられないのだ。
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by marshM | 2011-12-06 23:59 |
イチョウの絨毯
e0087225_22121781.jpg プラタナスやクヌギ椎の木は降り積もった落ち葉の上を歩くとパリパリと鳴った記憶がある。特にプラタナスは大振りな葉が歩道に何重にも落ちると小気味良い音がして楽しくなる。
 中央通は4割方銀杏の葉が色づいて、一番日当たりが良い木の下には鮮やかな黄色い葉が降り積もっている。朝は綺麗に掃除されているが、夕方の帰り道には北風に吹かれて黄色い島ができている。その落ち葉の上を踏み進んでみたが、銀杏の落ち葉は薄く儚く無言でただたたずんでいた。
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by marshM | 2011-12-05 22:23 |
ネタの熟成
e0087225_055582.jpg 朝、地下鉄の駅を出て事務所までの間、色々な事を考える。朝起きてからしばらく経ってちょうど頭が回り始めるからだろうか、いいアイディアがポロポロと浮かんでくる。
 その時はいいアイディアだと思うのだが、時間が経つと忘れてしまったり、よく考えてみれば穴がたくさんあったり。思いついたそれが必ずしも最後まで残るとは限らない。
 今日も確かに面白いネタを思いついていたのだが、思い返してみるとなんだかぜんぜん面白くない。もうちょっと発酵して味が出るまで寝かせておくことにしよう。
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by marshM | 2011-12-02 00:24 |
時間旅行
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 タイムマシンは理論上の産物で、もちろん実用化されてはいない。しかし、SF小説の中で詭弁として語るならば、よくある話が未来に移動することはすぐにでも誰にでも可能だ。一日24時間のスピードでわれわれはタイムトリップしているのだから。
 ある程度未来の自分の姿を想像することができれば、それは未来にタイムトリップしたと言えなくもない。無数にある可能性の世界線を仮定するのだから、それはその実正しい予測でなくてもかまわない。その創造した未来を避けるために、はたまたその通りに実現するために今この瞬間の選択をする。タイムパラドックスの無い健全なタイプトリップができるというわけだ。
 何を惚けたことをとお思いだろうが、夢をかなえるだとか病気に備えるだとか、自分の将来を見てきた事のように信じて今を生きているのだから、いながらにしてタイムトリップしていると言って悪いことは無かろう。正確に言うなら可能性のタイムリープだ。
 さて、ここに来て私は大きな世界線の分岐にたどり着いている。Aを取るかBを取るか、はたまたCを取るかのちょっとした違いで私の未来は大きく変わる。そう、私は未来の自分を見てきたのだ。タイムリープして帰ってきたのだ。正しい未来にたどり着くために、間違った選択をしないために、慎重に行動を選ばなくてはならない。
 
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by marshM | 2011-11-14 23:50 |
明け方の悪夢
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 明け方、レム睡眠とレム睡眠の合間、沈殿した記憶の中に呼びかけるわずかな刺激が朦朧とした意識をパニックに陥れる。ほんのわずかな兆候、動いても動かなくても力を抜いても入れても、そいつから逃れることはできない。
 そのナイトメアの名は「こむら返り」。何度繰り返しても未然に防ぐことも最小限に抑えることもできない。今朝の奴はただふくらはぎを伸ばしただけでは痛みが増すばかり、足全体を伸ばしてからふくらはぎを伸ばさなければ痛みが消えなかった。
 こむら返りは冷夏のプールで泳ぎまくっていた中学生の頃から数え切れないくらい起こしているが、それでも夢うつつの脳ミソでは足を伸ばして良いのか縮めて良いのかさえわからなくなってしまう。罠にはまったウサギのように途方にくれてしまうのだ。
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by marshM | 2011-11-04 23:04 |
1Kmの奥行き
e0087225_2233890.jpg 御徒町から毎朝外神田まで歩く間に、中央通が万世橋まで真っ直ぐ見渡せる位置を通る。その位置から見る景色は私のお気に入りの一つなのだ。目の疲れ具合の目安になるし、何より味気ないアスファルトの街なのにその時々の季節を主張しているところが面白いのだ。
 夏、アスファルトには逃げ水が現れ、熱せられた空気が揺らいで町は溶けていく。
 秋、深まるにつれ銀杏の色づきとともに霞がかかり視界は薄れてくる。
 冬、凍てついた空気はさえぎるものもなく、時間さえも凍らせたように全てを見通させる。
 春、そしてまた霞の春。暖かな日差しと歩き回る花たち。
 都会の味も素っ気もない幹線道路だが、案外いろんなところに季節の象徴は転がっているのだ。
 
 
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by marshM | 2011-11-02 23:03 |
名医
e0087225_1185264.jpg かかりつけの歯医者。私が子供のころから通って、今も東京から横浜まで1時間かかって診てもらっている歯医者。浮気したことは一度も無く、歯医者嫌いになるほど下手ではなく、あの薬の入った色とりどりのガラス瓶が置いてあった少しお気に入りの場所。
 時は流れて歯医者もハイテクを導入するようになり、レントゲンは即座にモニターに映し出され、アニメーションで施術が説明される。器具も超音波や無針注射で患者の苦痛が極限にまで抑えられるようになった。だが、その待合室は心なしか子供の頃より空いているように思えた。
 帰りに気をつけて風景を見ていると、近所には数件の歯科医の看板。いつの間にか商売敵が増えたようだ。
 母親世代が慕って通った大先生ももう引退していない。何から何まで移り変わる中で、それでも私は馴染みの扉を開けるのだ。信頼とはそういうものだろう。
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by marshM | 2011-10-24 23:59 |