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飛ぶようだった
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 バイザーのないヘルメットに容赦なく襲いかかる風に涙を流しながら代車のスクーターを快速で駆り、風となる楽しみと別れを告げる。
 バイク屋で待っていた我がチョイノリは隅々までピカピカだった。ものぐさな私にとって、ディーラーから帰ってくる先代のマイカーもガレージから帰ってくる現役のポンコツも、出来うる限りピカピカに仕上がってくる送り手の気持ちには苦笑と共に頭が上がらない思いであるのは、こんな小さなバイクに至っても同じ事だった。
 だいぶ馴染んだ代車のスクーターの感覚、加速の良さ、スピードの速さから一気にいつものチョイノリに鞍替えする事で、ただでさえ華奢で愚鈍なヤツに嫌気が差すのではないかと想像していた。しかし、そこそこ長いつきあいのグリップを握り、アクセルを開くとそんな事は杞憂であった事に気が付く。丁度良いスピードに丁度良い軽さ、安心感が足下の振動から伝わってくるのだ。
 鈍色に青を煙らせた雲の多い空から吹き付ける向かい風が、飛行機へ実速度よりも過剰に揚力を与えるように、私の心もふわりと風の中に持ち上げるのだった。


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by marshM | 2008-04-23 23:38 |
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