いかしたオープンカー
 一日薄ぼんやりとした雲が立ちこめ日が差し込んだと見るや西日となってみるみるエネルギーを失っていく一日は、呼吸をする度に鼻の奥を針で刺すような冷たい空気が満ちて締めくくる。
 ホームページの仕事の最終日、クライアントの事務所からファイルをアップロードしサイトを立ち上げるため、時間が自由に使える午後5時を指定されて帰宅のサラリーマンと共に駅を出る。街はすっかり暗くなり、それでも幾分か庶民的な地区であるその街を歩くと、生活の温もりが端々に転がっていて楽しい。
 旧街道を脇道にそれた所で角から走り出してきた車を見て私は目を疑った。この寒空にオープンカーである。それもいかにも労働帰りの老人が運転している。私が驚いたのはその不釣り合いな寒空と老人とオープンカーの組み合わせではなかった。そのオープンカー自体なのである。



e0087225_1575034.jpg それは軽トラックの運転席天井部分をフロントガラスと支柱ごと取り去ってあるのだ。子供が壊してしまったプラモデルのように、むき出しになった運転席で老人が飄々とハンドルを握り、脇道と本道にはさまれた駐車場の中をショートカットして通りに出ようとしている。
 しばらく呆然としてその車が通りすぎるのを見送ったが、急に可笑しくなって頭を振りつつ先を急いだ。早い所仕事を終わらせないと帰りが寒い。あの老人、寒空の中屈託のなさそうな顔で運転していたっけ。
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by marshM | 2007-01-24 23:59 |
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