玩具の木
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 子供の頃、鉄道模型のレイアウト、つまり鉄道のある風景を箱庭の様に模型で再現する事を知り、その特集書籍を良く飽きずに眺めていた時期があった。写真の中には古き良き郷愁を呼び起こす風景に満ちあふれていて、自分でもこんな風景をいつか作りたいと思い描いていた。
 いざ、自分で作ろうとした時に市販の草木キットが何とも嘘くさい作りである事に気が付きがっかりした。その頃模型屋の棚に並んでいたのはヨーロッパ製のパーツがほとんど。ヨーロッパの人はどうしてこんなに大雑把な物しか作らないのだろう、と不思議に思った物である。




 さて、それから月日は流れ、朝の薄明かりの中をグラナダへと近づくホテルトレインからぼんやりと外を眺めていた私は、20数年かかってひとつの真実にたどり着いてしまった。ヨーロッパ人の作る模型用の草木は適当に作っているのではなく、まさしくそんな作りの木が実在するのだという事を。
 日本にいて日本の木々しか見ていなかったので、針葉樹は背が高く雑木林に植わっているか海辺で強い風にうねっていると思い、広葉樹は枝を横に広げこんもりと葉をつけると思っていたのだが、スペインでは人々に「ウェルカム・ツリー」と呼ばれている妙に細長い針葉樹は通りや私道の脇に玩具の様に並び、細く長く上を向いて伸びる枝に貼った様な葉を付ける広葉樹が転々と色付いていた。あげくに松の木さえ直立して杉と見まがうばかりなのである。
 そしてその風景を見てしまうと、今まで見ていた嘘くさい玩具の木々が急に現実味を帯びてある種の郷愁を誘うのだから面白い。そのうち、時間が余る様になったらマヨルカ島のミニ山岳鉄道のレイアウトを作るのも悪くないかも知れないと思う様になるのだ。
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by marshM | 2006-10-30 23:59 |
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