緑の記憶
 花曇りの昼下がり。その日少年は学年の変わり目で学校が休みだった。夏休みや冬休みはあければ馴染みのあるクラスメートの元に戻れるが、春休みは先に何が待つのか皆目わからない。まるで澄んだ青さをうっすらかき消された、そこから見上げた空のようであった。
 少年は宛てもなく散歩に出かける事にした。母親にそう告げると、何故か青リンゴを一つ持たせてくれた。甘いにおいの青リンゴを持って行き着いた先は、かつて通った小学校の、見慣れていたより遙かに低い塀。偶然にもそこでかつてのクラスメートに出会った。
 短い休みの間に人恋しくなっていた少年は、あまり馴染みのなかったクラスメートであったが、再会を喜んで青リンゴを二人で丸かじりした。臭いに負けず甘くて美味しいリンゴだった。
 長い冬が終わってやっと過ごしやすくなったと確信が持てるが、しかし陽の光はうっすらと遮られたあやふやな一日。記憶もまたあやふやなままに。
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by marshM | 2006-04-14 23:59 |
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