記憶の歪み
e0087225_19393748.jpg お盆を過ぎると夏の勢いは急速にしぼんでいく。日差しが傾き夜の空気がひんやりとし、ツクツクボウシが鳴き始める。とは言え、日中の気温はまだまだ真夏日。高空に糸のような雲が流れている日はモクモクと伸び上がった入道雲が雷をつれてくる。
 先日の夕方、山の稜線に沿って大きな積乱雲が立ち並ぶ姿は壮観だった。暗くなった空の下には雨のカーテンも引き連れている。所用があって電車に乗ると、丁度そのカーテンに向かって走り出した。山に近づくにつれ、雷の音が大きくなり、次第に暗くなる。ハッキリと見えていた雨のカーテンがぼやけて境目がわからなくなった頃、列車の窓を大粒の雨がたたきつけた。
 雨を引き連れた雲が印象的だったのは小笠原父島の山頂からのながめだった。絶海の孤島と海を渡る雲。しかし何処までもゆっくりと流れる時間の中では、それは一枚の絵として記憶に残る。あの雲が引き連れた雨のカーテンは父島の大地を濡らしたのかどうかは忘却の彼方。
 急行列車が時速100kmで雲と山の間を駆け抜けると、再び夕日の輝く街並みが姿を現した。雨は西の空に置き去り、何処を探しても虹は見あたらなかった。
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by marshM | 2012-08-23 19:56 |
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