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冬の日曜日
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 ある晴れた冬の日曜日の事。正午を回った時刻の太陽は朝に霜を溶かした時と同じくらいの高さで南へ移動し、遮る物一つ無い空から暖かな日差しを柔らかに降り注いでいた。
 スクーターにまたがり坂の多い住宅街のいつもの道を走っていると、細い坂道に隣接した畑の向こう側にのしかかるように広がる小さな野原に、椅子を出して読書をする老人の姿が見えた。元は栗畑だったと思われる小さな草地は、東側を向いて畑に落ち込んでいる傾斜地だが、南側に遮る物が何もないので冬でも青々とした草が輝いて見える。ここに越してもう大分経つがそこに人が座っているのを見るのは初めての事だった。

 夜、夫婦でふらりと散歩に出かけると住宅街の暖かな灯りの品評会が始まる。大抵よい評価を得るのは暖色系の電灯を使った照明の部屋だ。そしてそれに窓や建物の雰囲気が加算される。そんな評価の中でその老人が座る野原の上方に建つ家は蛍光灯に青々と照らされていて評価は高くなかったはずだが、建物に少し昭和初期の西洋風なテイストが加味されていて強く印象に残る家だった。

 スクーターが畑の前を通り過ぎる一瞬、横目で見た読書する老人と背後の家の風景は、頭の中で生き生きと動き出しいつの間にか私自身がそこに座っているような想いにとらわれた。そんな未来があっても面白い、と少し心が軽くなった。



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by marshM | 2010-01-25 23:59 |
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